政府がホワイトハッカーチームを新設? 自衛隊や警察にもいるのでは?


公開日:2026-10-23 更新日:2026-10-23

一般向け

「政府がホワイトハッカーの専門チームを作る」と聞いて、「自衛隊や警察にも、そういう人はいるのでは?」と思った人もいるでしょう。

はい、既に専門組織があります。 ただし、同じコンピューターの専門家でも、守る対象や仕事の目的が違います。今回のニュースと、既存の組織との関係を整理してみましょう。

※2026年10月23日に確認した情報をもとにしています。新チームについては、報道で確認できた範囲を紹介します。

状況(どんなチームを作るの?)

10月23日の時事通信の報道によると、赤沢経済産業相は、IPA(情報処理推進機構)にホワイトハッカーのチームを11月中に設けるよう指示したと発表しました。

IPAは、情報技術の安全な利用や人材育成などを支える公的な機関です。前日の報道では、企業のサイバー攻撃対策を支援するため、人材の確保や育成を目指すとされています。出典:時事通信、10月22日

23日の報道では、攻撃を模した試験でシステムの弱点を見つけ、修正につなげると説明されています。攻撃者にやり返す部隊ができた、と受け取るのは早計です。

そもそも、ホワイトハッカーって何?

攻撃の仕組みを理解し、その知識を情報やシステムを守るために使う人を指す言葉です。

例えば、持ち主と範囲を決めたうえで、システムに侵入できる弱点がないか試し、直すべき点を知らせます。こうした試験を「ペネトレーションテスト」と呼びます。

大切なのは、許可された範囲で調べること です。「守るため」という理由だけで、他人のサイトへ勝手に侵入してよいわけではありません。言葉の名前と、法律上できることは分けて考える必要があります。

自衛隊や警察とは、何が違うの?

既存の組織の主な仕事を、簡単に整理すると次のようになります。

表が見切れる場合は、表内を横にスクロールできます。

組織主な仕事
自衛隊防衛省・自衛隊のシステムを守り、国の安全保障に関わるサイバー攻撃に対処する
警察サイバー犯罪の捜査や被害防止、攻撃の分析などに取り組む
IPA企業などの対策や人材育成を支え、攻撃を受けた組織への技術的な助言などを行う

自衛隊には「自衛隊サイバー防衛隊」があり、ネットワークの監視や攻撃への対処を行っています。国や重要な社会基盤への一定の重大な攻撃に対処する、新たな法制度もあります。「自衛隊は自分たちのパソコンしか守らない」という説明も正確ではありません。出典:防衛省の解説、令和8年版防衛白書

警察には「サイバー警察局」などの体制があり、捜査の支援や高度な解析、民間との連携も進めています。被害が起きた後だけが仕事ではありません。出典:警察庁

役割には重なる部分があり、互いの連携も必要です。それでも、犯罪を調べることと、会社のシステムの弱点を調べて直すことは、同じ仕事ではありません。

問題定義(既にあるのに、なぜ新しく作るの?)

実はIPAにも、2014年に発足した「サイバーレスキュー隊 J-CRAT」があります。特定の組織を狙う攻撃について相談を受け、被害を抑えるための調査や助言などを行っています。出典:IPA

つまり、今回が「国が初めて専門家を集める」という話ではありません。

企業への支援を増やす方向は報道から読み取れます。ただし、新チームが既存の支援とどう分担するか、どの企業が利用できるかなどの詳細は、今回確認した資料だけではわかりません。

ここで確かめたいのは、新しい名前が増えることより、これまで足りなかった支援が届くかどうか です。今後の発表では、支援する対象、相談先、既存組織との分担を確認したいところです。

対策(会社として)

新チームの発足を待つ間も、会社の備えは必要です。

  • ソフトウェアの更新や、大切なデータのバックアップを続ける。
  • システムの管理を任せている会社と、点検や緊急時の連絡方法を確認する。
  • 被害の疑いがあれば、社内の担当者や専門家、警察などへ状況に応じて相談する。

基本的な備えの確認には、IPAの情報セキュリティ対策支援サイトも利用できます。新チームが、すべての会社を自動で点検してくれると考えないことが大切です。

対策(私たちにできること)

このニュースだけを理由に、スマートフォンへ特別なアプリを入れる必要はありません。

普段の更新や安全なログイン方法を続け、利用先で問題が起きたときは公式のお知らせを確認しましょう。不正アクセスなどの被害については、警察の相談窓口もあります。

また、「専門チームができるから、もう安心」とも「今まで誰も守っていなかった」とも考える必要はありません。誰が何をしてくれるのかを確認することが、ニュースを理解する手掛かりになります。

まとめ

  • 自衛隊・警察・IPAには、既にサイバー攻撃に対応する専門組織があります。
  • 今回は、IPAで企業の対策を支える新チームを設けるという報道です。守る対象や目的の違いに注目しましょう。
  • 既存組織との分担や支援対象は、今後の発表も確認する必要があります。会社と私たちの基本的な備えは、引き続き大切です。