「スマホソフトウェア競争促進法」をやさしく解説
公開日:2025-12-10 更新日:2025-12-10
※2025年12月時点の情報です。
1. この法律は何のためのもの?
正式名称は
「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」
といいます。ニュースなどでは短く
- スマホソフトウェア競争促進法
- スマホ法
- スマホ新法
などと呼ばれています。
ざっくり一言でいうと…
「iPhone や Android のアプリやブラウザなどで、特定の会社だけが有利になりすぎないようにするための法律」
です。
スマホは今や「生活インフラ」のような存在になっていますが、その中で
- モバイルOS(iOS、Android など)
- アプリストア(App Store、Google Play など)
- ブラウザ
- 検索エンジン
といったソフトウェアは、ごく一部の大手企業がほとんどを握っています。
そのため、新しいサービスが入りにくい・料金が高止まりする・選択肢が少ないといった問題が出てきました。
この法律は、
- 利用者がもっと自由に選べるようにする
- アプリやサービスを作る側も公平に勝負できるようにする
ことを目的としています。
2. いつから始まるの?
- 2024年6月:国会で可決・成立
- 2024年6月19日:公布
- 2025年12月18日:全面施行(本格スタート)
2025年12月18日以降、法律に基づいた本格的な運用が始まり、
Apple や Google など「指定事業者」とされた会社には、
やってはいけないこと(禁止事項) と 守らなければならないこと(遵守事項) が課されます。
3. 誰が対象になるの?
この法律のルールが直接かかるのは
- スマホOS
- アプリストア
- ブラウザ
- 検索エンジン
などを提供していて、
市場でとても強い立場にある大企業 です。
日本では、
- Apple(iOS・App Store・Safari など)
- Google(Android・Google Play・Chrome・検索エンジン など)
が主な対象になるとみられています。
4. 具体的に何が変わる可能性がある?
4-1. アプリストアの選択肢が増える
これまでは、
- iPhone → App Store からだけインストール
- Android → 実質的には Google Play が中心
という状態でした。
スマホ法により、
- 他社製のアプリストアを妨害してはいけない
- 利用者が別のアプリストアを選ぶことを邪魔してはいけない
といったルールができます。
その結果、
- 新しいアプリストアが登場する
- 特定のジャンルに特化したストアが出てくる
(例:ゲーム専門、子ども向け専門、仕事用専門 など)
といった変化が起こるかもしれません。
4-2. 支払い方法の選択肢が増える可能性
今までは、
- アプリ内で課金・購入する時に
「Apple や Google の決済だけを使いなさい」というルール - その結果、開発者は 30% 前後の手数料 を取られるケースが多い
という問題がありました。
スマホ法によって、
- アプリ内から外部の決済ページへの誘導を禁止してはいけない
- 自社決済だけを優遇しすぎて、他の決済を締め出すことはNG
といった方向性の規制がかかります。
これにより、
- クレジットカード会社や
- 日本の決済事業者(Pay系など)
を含む さまざまな支払い方法が使いやすくなる ことが期待されています。
4-3. 「自社サービスだけ優遇」がしにくくなる
OS やアプリストアを持っている会社が、
- 自分のブラウザや音楽アプリを「最初から入れておく」
- しかも「他社のアプリには同じ条件を与えない」
といったことをやりすぎると、
他社が不利になり、市場の競争が止まってしまいます。
スマホ法では、
- 自社サービスをひいきしすぎて、他社のアプリを不当に不利にする行為
→ 禁止される方向 - 利用者が「最初に起動するアプリ」(デフォルトアプリ)を選びやすくする
→ こうした配慮が求められます
結果として、
- 「最初から入っているから」という理由だけで使う状況から
- 「ちゃんと比べて選ぶ」方向に、少しずつ変わっていく可能性があります。
5. 利用者にとってのメリット
メリット1:アプリやサービスの選択肢が増える
- 新しいアプリストアやサービスが出てきやすくなります。
- 「大手が決めたルールに合わなかったから出せない」というアプリが減る可能性があります。
→ 自分に合ったアプリを選びやすくなる ことが期待できます。
メリット2:価格や手数料が下がる可能性
- 開発者が払う手数料が下がれば、その分を
- アプリの価格引き下げ
- サービス内容の充実 などで、利用者に還元する動きも出てくるかもしれません。
→ サブスク料金やアプリの価格が、競争で見直される可能性 があります。
メリット3:イノベーション(新しい工夫)が生まれやすい
- 「大手のルールに縛られにくくなる」ことで、
- 新しいアイデアを持った企業や個人が参入しやすくなります。
→ セキュリティ、健康管理、教育、エンタメなど、
身近な分野のアプリがもっと進化するかもしれません。
6. 利用者にとってのデメリット・注意点
良いことばかりではなく、心配な点もあります。
デメリット1:セキュリティリスクが増える可能性
- アプリストアの数が増えると、
- 中には安全性の低いストアやアプリが紛れ込む可能性があります。
- 公式ストア以外のアプリを入れる場合、
- ウイルス・詐欺アプリなどに注意する必要があります。
→ 「どのアプリストア・アプリが信頼できるか」を見極める力が、今まで以上に大事になります。
デメリット2:設定や選択が複雑に感じられるかも
- 「ブラウザはどれを使う?」「検索エンジンは?」「アプリストアは?」など、
- 選択肢が増えると、設定画面も複雑になります。
- 特に
- スマホに詳しくない人
- 高齢の方
- ITが苦手な人 には、**「よく分からないから不安」**という気持ちが出てくる可能性があります。
デメリット3:トラブル時の責任が分かりにくくなる可能性
- 公式ストア以外のところから入れたアプリで問題が起きたとき、
- 「スマホのメーカーに相談すべきなのか」
- 「アプリストアの運営会社なのか」
- 「アプリを作った会社なのか」 が分かりにくくなる場合があります。
→ 「どこに相談すればよいか」が、今より複雑になるかもしれません。
7. 企業側(アプリ開発者・プラットフォーマー)から見たメリット・デメリット
アプリ開発者・サービス事業者のメリット
- 外部決済を使いやすくなると、手数料コストを抑えやすくなる
- 自社サイトや別ストアからユーザーを案内しやすくなる
- OS の機能にアクセスするルールが整理されることで、
- 新しいタイプのアプリやサービスを作りやすくなる
アプリ開発者のデメリット・負担
- 法律やガイドラインを理解し、コンプライアンス対応をしなければならない
- 決済方法や配信方法が増えると、その分、運用・サポートが複雑になる
Apple・Google などプラットフォーム側の負担
- これまでのビジネスモデルの見直しが必要
- 他社を締め出すようなルールを作ると、公正取引委員会から是正を求められる
- 日本以外(EU の DMA など)とも合わせて考える必要があり、
世界的に規制対応コストが増えている状況です。
8. 私たち利用者が意識したいポイント
「選べる」ことは良いことだが、選ぶ力も必要
- どのアプリストア・アプリを使うか、自分で判断する必要が出てきます。
「安い」「便利」だけでなく、「安全性」もチェック
- レビュー、運営会社、公式情報などを確認する習慣が大事です。
困ったときは公的機関の情報も活用
- 国民生活センター、公正取引委員会、総務省などが
スマホやアプリに関する注意喚起や解説を出しています。
- 国民生活センター、公正取引委員会、総務省などが
9. まとめ
スマホソフトウェア競争促進法は、
- スマホOS
- アプリストア
- ブラウザ
- 検索エンジン
といった、スマホで特に重要なソフトウェアの世界に「公正な競争」を持ち込むための法律です。
これにより、
- 利用者の選択肢が増える
- 価格やサービス内容が競争で良くなる
- 新しいアプリやサービスが出てきやすくなる といったメリットが期待されます。
一方で、
- セキュリティリスク
- 設定の複雑さ
- トラブル時の窓口の分かりにくさ など、**利用者側にも新しい「考えるポイント」**が増えます。
これからテレビやネットで「スマホ新法」「アプリストアが変わる」といったニュースを見かけたら、
「私たちが、どんなスマホ環境を選び、どう使いこなすか」
を考えるきっかけにしてみてください。