最近なぜPC用メモリが高くなっているの?
公開日:2025-12-11 更新日:2025-12-11
はじめに
「PCのメモリを増設しようとしたら、前よりずっと高くなっていてビックリした」
ここ1年くらいで、こう感じている人が増えています。
しかもメモリだけでなく、SSDやHDDなどの「データを覚えておく部品」もまとめて値上がり中です。
今日は、なぜ今メモリが高くなっているのか、そして今後しばらくどうなりそうかを、
中学生でも定年後の方でも分かるように、やさしく整理してみます。
1. いま何が起きているの?
店頭価格がじわじわ→ドカンと上昇
- 2024年ごろまでは「メモリは今が買い時」と言われるくらい安い時期が続いていました。
- ところが、2025年の秋ごろから、PC用メモリやSSDの価格が急に上がり始め、
- DDR5メモリ(新しめの規格)は、2〜3倍近くまで跳ね上がった例もあります。
- 一部のショップでは「お一人様○個まで」と購入制限がかかるほどです。
つまり、
「前は8GBがこの値段で買えたのに、今は同じお金でも半分しか買えない」
というような状況になってきています。
2. なぜ値上がりしているの?(ざっくり3つの理由)
理由① AIブームで“メモリの争奪戦”になっている
いちばん大きいのは、生成AIブームです。
- ChatGPTのようなAIは、巨大な計算をする「データセンター」という建物の中で動いています。
- そのAI用サーバー1台あたりに、ものすごい量のメモリとストレージ(SSDなど)が必要になります。
- さらに、世界中でAIサービスが増え、データセンターの建設ラッシュになっています。
あるAIの大型プロジェクトでは、
世界のメモリ生産量の4割近くに匹敵する量を、特定のAI向けに長期契約したという報道もあります。
こうなると当然、
「まずはAI向けの大口のお客さんに売るよ」
となり、一般のPC向けに回ってくるメモリが足りなくなる → 価格が上がる、という流れになります。
理由② その前の「安すぎ時代」で生産を絞っていた
「そんなに足りないなら、工場をフル稼働すればいいのでは?」と思うかもしれません。
ところが、メモリメーカーはすぐには増産できない事情を抱えています。
- 2023年ごろ、世界的にPC・スマホの売れ行きが落ちて、
メモリの売上が3〜4割も落ち込んだ時期がありました。 - そのとき各社は、
- 工場の稼働を落とす(減産)
- 新しい工場や設備への投資を後ろ倒しにする などの**「ブレーキ」を踏んでいた**のです。
そこへ突然、AIブームでアクセル全開の需要が来たので、
「ブレーキを踏んでいた車が、いきなり全力ダッシュしろと言われた」
ような状態になり、供給が追いつかず、価格が一気に跳ね上がった、というわけです。
理由③ 日本独特の事情:円安
日本に住む私たちにとっては、円安も無視できません。
- メモリやSSDの取引は、基本的に米ドル建てで行われています。
- 2025年12月時点で、1ドル=155円前後と、
ここ数十年で見てもかなりの円安水準です。 - 同じ100ドルのメモリでも、
- 1ドル=100円なら「1万円」
- 1ドル=150円なら「1万5,000円」
となり、円が弱いぶん、日本では余計に高く感じることになります。
3. どのくらい上がっているの?
細かい数字は製品やお店によって違いますが、ざっくりいうと:
- DDR5メモリ(16GBなど)
→ 2025年9月頃と比べて2〜3倍になったという報告も。 - 一部の人気メモリ・SSD製品
→ 数カ月で価格が2倍近くに上がった例もあります。 - 「安売り合戦」だった頃に比べると、
→ 「昔の感覚で“とりあえず大容量”を選ぶと、お会計でショックを受ける」水準です。
ニュースやPC専門店のブログでも
「メモリ・SSD高騰で、買い時を逃したかも」といった見出しが出ている状況です。
4. 今後どうなりそう?(将来展望)
4-1. 1〜2年ほどは“高止まり or さらに上昇”の見通し
多くの調査会社やアナリストは、少なくとも2026年ごろまでは厳しい状況が続くと見ています。
- 2025年の終わりにかけても、
DRAM(メモリ)の契約価格は四半期ごとに1ケタ台後半〜2ケタ%の上昇が続く見込み。 - 別の調査では、
2026年のメモリ価格は、さらに最大20%程度上がる可能性があるとされています。 - 2026年向けのAI用メモリは「もう売り切れ」と宣言しているメーカーもあり、
AI向けを優先 → 一般向けが後回しという構図はすぐには変わりません。
このため、「すぐに元の安い価格に戻る」と考えるのは危険、というのが現在のコンセンサスです。
4-2. その先(2027〜2028年)でようやく落ち着く可能性
もちろん各メーカーも、黙って見ているわけではありません。
- 韓国やアメリカなどで、新しい半導体工場の建設が進められています。
- ただし、メモリ工場は
- 建てるのに数年
- 機械を入れて調整するのにさらに時間 がかかるため、フル稼働は早くても2027〜2028年ごろと見られています。
そのころまでに、
- 新しい工場が本格稼働して供給量が増える
- AI側も、省メモリで動く新しい技術が出てくる
といったことが起これば、今のような“争奪戦価格”は少し落ち着いてくる可能性があります。
ただし、
「2023年までの“安すぎた時代”の水準に完全に戻るかどうか」は未知数
という見方が多いです。
メモリ業界は**「安くなりすぎ → 作る量を減らす → そのあと高騰」という波を繰り返してきたため、
今回も“新しい波の頂点”**に向かっている段階とも言えます。
5. 私たち個人はどうしたらいい?
5-1. いますぐ買うか迷っている人へ
- 「急ぎでないなら様子見」も選択肢
- まだ使えているPCなら、すぐに買い替えず、
不要なソフトを消したり、設定を見直したりして延命を図るのも一手です。
- まだ使えているPCなら、すぐに買い替えず、
- どうしても今必要なら「無理に大容量を狙わない」
- たとえば動画編集や3Dゲームを本格的にしないなら、
16GBあれば当面は困らない、というケースも多いです。
- たとえば動画編集や3Dゲームを本格的にしないなら、
5-2. お得に乗り切るためのヒント
- セールやポイント還元をうまく使う
- 年末セールやキャンペーンを狙う。
- 中古・アウトレットも検討
- 信頼できるショップなら、中古メモリや再整備品も選択肢になります。
- PC本体ごと買い替えるほうが得な場合も
- 単品のメモリを買うより、
「メモリ増量中」の完成品PCのほうが、トータルで安くつくこともあります。
- 単品のメモリを買うより、
6. まとめ
最後に、ポイントを整理しておきます。
なにが起きている?
- ここ1〜2年で、PC用メモリやSSDの価格が2〜3倍に跳ね上がった例もあり、
一般ユーザーにも影響が出ている。
- ここ1〜2年で、PC用メモリやSSDの価格が2〜3倍に跳ね上がった例もあり、
主な原因は?
- 生成AIブームで、データセンター向けのメモリ需要が爆発。
- その前の不況期にメモリメーカーが減産していたため、すぐに供給を増やせない。
- 円安で、日本ではドル建ての部品が余計に高くなっている。
今後の見通しは?
- 2026年ごろまでは、高値や供給の厳しさが続く可能性が高い。
- 2027〜2028年に新工場が動き出せば、徐々に落ち着く余地はあるが、
「昔の激安水準」まで戻るかは不透明。
私たちができることは?
- 本当に必要なタイミングと容量を見極める。
- セール・中古・完成品PCなど、柔軟に選びつつ乗り切る。
おわりに
ニュースで
「AIが世界を変える!」という話題を見る一方で、
私たちの身近なところでは「メモリが高くてPCが買いづらい」という形でその影響が出ています。
世界的な流れそのものを止めることはできませんが、
仕組みを知っておくことで、「なぜ高いのか」「いつ買うべきか」を冷静に判断できるようになります。
「最近メモリ高いなあ」と感じたとき、
今日の話をニュースの“裏側事情”として思い出してもらえたらうれしいです。