中高生とオンラインカジノ問題をやさしく解説
公開日:2025-11-25 更新日:2025-11-25
状況
- 日本では、オンラインカジノの利用そのものが違法です(海外の会社が運営していても、日本からお金を賭ければ賭博罪)。
- それにもかかわらず、スマホやパソコンから簡単にアクセスできるため、中高生がプレイしてしまう例が出ています。
- たとえば神奈川県の中学1年生の男子が、オンラインカジノを繰り返し利用していたとして児童相談所に通告されました。小6の頃から始め、合計約700万円分を賭けた形跡があったと報じられています。お金は小遣いだけでなく、親の財布から抜き取っていたとされています。
- 高校生が親の口座にアクセスし、数百万円単位の金額をオンラインカジノに使ってしまったケースも報じられています。
- 警察庁のまとめでは、オンラインカジノなどオンライン賭博で摘発された人は、ここ数年で過去最多を更新しており、若者・一般人にも広がっていることがわかります。
原因
1. スマホ1台で「カジノ」ができてしまう
- 家にいながら、アプリやブラウザから数タップでカジノサイトに入れてしまいます。
- 身分証チェックがゆるいサイトや、そもそも確認しない違法サイトも存在します。
2. 「違法だと知らなかった」若者が多い
- 「海外のカジノだから日本の法律は関係ない」
- 「広告でよく見るから、OKなんだと思った」
ーーという“誤解”が広がっています。 - 実際には、海外運営でも日本から賭ければアウトです。
3. SNSや動画配信での“キラキラ演出”
- YouTuber やインフルエンサーが「簡単に稼げた」「一発逆転!」といった雰囲気で紹介することがあります。
- それを見た中高生が「ゲームの延長のような感覚」で興味を持ち、深く考えずに始めてしまいます。
4. ゲームのガチャ感覚でハマる仕組み
- スロットやルーレットの演出は、スマホゲームの「ガチャ」とよく似ています。
- 「次こそ当たるかも」という期待で、負けてもやめにくい心理が働きます。
5. 家庭の見守りが追いつかない
- 親世代は「スマホゲーム」には気をつけていても、オンラインカジノまで想像が及ばないことも多いです。
- 決済メールを子どもが削除してしまい、しばらく家族が気づかないケースもあります。
問題定義(何が問題なのか)
そもそも違法行為である
- 日本では、公営ギャンブル以外の賭博は原則禁止です。
- 中高生が「犯罪行為」に足を踏み入れてしまっていることが最大の問題です。
お金のトラブルが深刻
- 親のクレジットカードや口座を勝手に使い、数十万〜数百万円単位の損失になる例があります。
- 借金を重ね、消費者金融や「闇バイト」(違法な仕事)に流される危険も指摘されています。
ギャンブル依存症の入り口になりやすい
- 若いうちに強い刺激のギャンブルに触れると、依存症に発展しやすいと研究で示されています。
- 「勝てたときの快感」を忘れられず、負けを取り返そうとしてさらに深みにはまるおそれがあります。
“お金の感覚”が壊れてしまう
- 数万円を「小さい金額」と感じるようになり、
- 勉強や部活
- 友だちとの関係
よりも「賭け事」を優先するようになる危険があります。
- 数万円を「小さい金額」と感じるようになり、
被害にあっても、ほとんど守られない
- 違法サイトで遊んでいるため、勝っても払ってくれない/アカウントを消されるといったトラブルも多いです。
- 警察や行政に相談しても、必ずしもお金が戻るわけではありません。
予測(今後どうなるか)
- スマホとネット環境がある限り、オンラインカジノサイト自体を完全に消すことは難しいとみられます。
- 国内では取り締まりや啓発が強化されていますが、海外の新しいサイトや暗号資産(仮想通貨)を使うカジノなど、形を変えたサービスが次々登場する可能性があります。
- 若者の間では、
- スポーツの“勝ち負け”にお金を賭ける「スポーツベッティング」
- ゲーム内アイテムにお金を賭ける行為
など、**「ゲームとギャンブルの境目」がますますあいまいになると予想されています。
対策(会社として・私たちとして)
1. 会社・学校・自治体ができること
- フィルタリングとアクセス制限
- 学校や会社のWi-Fi・端末では、ギャンブルサイトへのアクセスをブロックする。
- 啓発授業・研修
- 学校で「オンラインカジノは違法」「簡単にハマるしくみ」を具体的な事例とともに伝える。
- 会社の新人研修やコンプライアンス研修でも、オンライン賭博を例に情報モラル教育を行う。
- 相談窓口の周知
- ギャンブル依存症支援の窓口や、こども・若者の相談窓口を、ポスターや配布物で広く知らせる。
2. 家庭・私たち一人ひとりができること
(1)ルールと“対話”をセットにする
- 「課金の上限」「夜何時までスマホOKか」など、家庭内ルールを話し合って決める。
- ただ禁止するだけでなく、**「なぜ危ないのか」**を一緒にニュースを見ながら話す。
(2)お金と時間の“見える化”
- クレジットカードや決済アプリの利用通知をオンにし、親にもリアルタイムで届くようにする。
- 通帳や明細を、子どもと一緒に定期的に確認する習慣をつける。
(3)スマホに“安全装置”をつける
- フィルタリングアプリや、ギャンブルサイトをまとめてブロックするアプリを活用する。
- アプリのインストールや課金に、保護者の承認が必要な設定にしておく。
(4)「もしや…」と思ったら早めに相談
- 以下のようなサインがあれば、早めに相談機関につなぐことが大切です。
- お金の使いみちをはぐらかす
- 夜中にスマホを手放さない
- 成績が急に落ちた・遅刻や欠席が増えた
- 家庭だけで抱え込まず、学校・自治体・専門機関に相談しましょう。
影響(私たち・社会にどう影響するか)
家庭の経済への打撃
- 数十万〜数百万円単位の損失は、一般家庭にとって非常に重い負担です。
- 生活費の不足や、ローンの返済が難しくなるなど、生活基盤が揺らぐ可能性があります。
子どもの将来への影響
- 中高生のうちから「楽して一発逆転」を求める癖がつくと、
- コツコツ努力すること
- 小さな成功体験を積むこと
を学ぶ機会が失われます。
- ギャンブル依存症になると、進学・就職・人間関係にも長期的な悪影響が出るおそれがあります。
- 中高生のうちから「楽して一発逆転」を求める癖がつくと、
犯罪への巻き込まれリスク
- オンラインカジノでできた借金を返すために、
- 「高額バイト」「簡単に稼げる仕事」と称する闇バイト
に誘われ、特殊詐欺や違法薬物など、より大きな犯罪の世界へ引き込まれる危険があります。
- 「高額バイト」「簡単に稼げる仕事」と称する闇バイト
- オンラインカジノでできた借金を返すために、
社会全体の“信頼コスト”の増大
- 不正利用されたクレジットカードの補償、家族間トラブル、相談・支援にかかるコストなど、社会全体の負担も増えます。
- 「ネットは危ないから使わせない」という極端な流れになると、デジタル社会のメリットも活かしにくくなります。
株価への影響
オンラインカジノの多くは、海外のライセンスのもとで運営されているか、そもそも違法・半違法のグレーな事業者です。日本の証券市場に上場していないケースも多く、個別に「このニュースでどの会社の株が上がる・下がる」とは言いにくいのが実情です。
ただし、次のような間接的な影響は考えられます。
ギャンブル産業全体への規制強化リスク
- オンラインカジノ問題が大きく報じられるほど、政府や自治体は規制強化に動きやすくなります。
- その流れの中で、合法的なカジノ・パチンコ・公営ギャンブル関連企業の株価が、先行き不透明感から一時的に不安定になることがあります。
決済・フィンテック企業への影響
- クレジットカード会社や決済サービスが、オンライン賭博への利用を厳しく制限するよう求められる場合があります。
- 規制対応のコストがかかったり、特定の事業領域を縮小せざるを得なくなったりする可能性があります。
セキュリティ・フィルタリング関連企業への追い風
- 学校や家庭向けのフィルタリングサービス、セキュリティソフトの需要は増える可能性があります。
- こうした企業は、中長期的にはプラス材料として評価されることも考えられます。
とはいえ、株価は世界情勢や金利、為替など多くの要因で動くため、「オンラインカジノ問題だけ」で説明するのは危険です。投資をする場合は、リスクをよく理解し、自己責任で判断する必要があります。
今後の見通し(回復までの時間)
ここでいう「回復」とは、
- 若者が違法なオンライン賭博に手を出さなくなること
- すでに被害にあった家庭や本人が、生活や心の健康を取り戻すこと
を指します。
1. 法制度・取り締まりの強化
- 国や自治体は、オンラインカジノの違法性を周知することを法律上の義務として位置づけ始めています。
- 広報ポスター、動画、SNSでの注意喚起、学校への教材提供など、対策は加速しています。
- ただし、海外サイト・暗号資産・VPNなどを使えば抜け道もあるため、これだけで問題がゼロになるわけではありません。
2. 「依存からの回復」は長期戦
- ギャンブル依存症からの回復には、一般的に年単位の時間が必要になります。
- 本人の治療・カウンセリングに加え、家族の支援や環境の調整も欠かせません。
- 一度いったん落ち着いても、ストレスや誘惑で再発することも多いとされます。
3. 「教育」と「デジタルリテラシー」がカギ
- 子どもたちが自分で情報を見極め、
- 「これは違法」
- 「これは危険」
と判断できる力を身につけるには、時間と継続的な教育が必要です。
- その意味で、「数年で解決する問題」ではなく、10年単位で向き合っていくべき社会課題といえるでしょう。
同様の事例との比較
オンラインカジノに限らず、世界中で**「若者とギャンブル」**の問題が広がっています。
オンラインスポーツベッティング
- 海外では、16〜17歳の高校生のうち、5人に1人がオンラインのスポーツ賭博を経験しているという調査もあります。
- サッカーや野球など、身近なスポーツに「お金を賭ける」文化が、若者にも広がっています。
ゲーム内課金・ガチャとの境界
- スマホゲームの「ガチャ」や、ゲーム内アイテムを賭ける仕組みは、見た目はゲームでも、実態はギャンブルに近い部分があります。
- 「ゲームだから大丈夫」と油断しているうちに、ギャンブル脳が育ってしまう危険が指摘されています。
闇バイト・特殊詐欺とのつながり
- オンラインカジノで負った借金をきっかけに、
- 口座を売る
- 「受け子」「出し子」など特殊詐欺に加担する
といった犯罪に巻き込まれるケースも報告されています。
- オンラインカジノで負った借金をきっかけに、
海外のブラックマーケット型ギャンブルサイト
- イギリスなどでは、規制を逃れた違法賭博サイトが、子どもや依存症の人までターゲットにしていると報じられています。
- 派手な広告やゲーム風のデザインで誘惑し、勝っても払わない・年齢確認をしないといった悪質な実態が問題になっています。
オンラインカジノ問題は、こうした**「デジタル時代のギャンブル問題」**の一部であり、日本だけの特殊な現象ではありません。
まとめ
- オンラインカジノは、海外運営であっても日本から利用すれば違法です。
- にもかかわらず、スマホ一つでアクセスできる手軽さや、派手な広告・SNSの影響で、中高生まで巻き込まれる状況になっています。
- 問題はお金だけではなく、
- ギャンブル依存症
- 犯罪への巻き込まれ
- 将来のキャリアや人間関係への悪影響
など、人生全体に長く影を落とす可能性があります。
- だからこそ、
- 国・自治体・学校による「法律と危険性」の周知
- 会社や家庭によるフィルタリング・ルールづくり
- 何より、親子や大人同士の対話
がとても重要になります。
最後に、大人である私たち一人ひとりが、
- 「楽して一発逆転」ではなく、
- 「少しずつ積み重ねることの大切さ」
を自分の生き方で示していくことも、大きな予防策になります。
オンラインカジノは“手軽な遊び”ではなく、人生を壊しかねない危険な賭け事であることを、世代を超えて共有していきましょう。