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「KawaiiGPT」とは何?――“かわいいAI”の名前を持つ危険な攻撃用AIをやさしく解説


公開日:2025-12-01 更新日:2025-12-01

状況

最近「KawaiiGPT(カワイイ・ジーピーティー)」という名前のAIが、サイバーセキュリティの世界で話題になっています。
名前だけ聞くとゲームかキャラクターのようですが、実際は**サイバー攻撃に使われる“犯罪向けAI”**です。

  • 海外のセキュリティ企業(Palo Alto Networks の調査部門 Unit 42)が、攻撃に使われていると警告しました。
  • メールでだます「フィッシング詐欺」や、パソコンを壊したり乗っ取ったりする「マルウェア」の作成を手伝うAIだとされています。
  • 「WormGPT 4」など有料の“犯罪向けAI”もありますが、KawaiiGPTは無料で使える点が大きな特徴です。

原因

なぜ、こんなAIが出てきたのでしょうか。

  1. ふつうのAIには「ブレーキ」が付いているから

    • 私たちがふだん使うチャットAIには、「犯罪のやり方は教えない」「危険なプログラムは作らない」という安全装置(ガードレール)が入っています。
    • 犯罪者から見ると、この安全装置は「じゃまな機能」です。
  2. 犯罪者にもAIが“便利すぎる”から

    • 難しい英語のメールを自然な文章に直したり、プログラムの間違いを直したりするのにAIはとても便利です。
    • そこで「安全装置を外し、攻撃に特化させたAIを作ろう」という動きが出てきました。
  3. コミュニティ主導・無料で広まりやすい仕組み

    • KawaiiGPTは、特定の企業ではなく、ネット上のコミュニティが改良を続けていると言われています。
    • お金を払わずに使えるため、世界中の“スキルの低い犯罪者候補”にも届きやすいのが問題です。

問題定義(何が問題なのか)

いちばん大きな問題は、**「サイバー攻撃のハードルが一気に下がってしまう」**ことです。

  • これまでは、悪質なメールやマルウェアを作るには、それなりの専門知識や英語力が必要でした。
  • KawaiiGPTのようなAIを使うと、専門知識があまりなくても、“それっぽい”攻撃を量産できてしまうと懸念されています。

その結果として:

  • 高齢者やITに詳しくない人が、ますます精巧な詐欺メールにだまされやすくなる。
  • 中小企業や病院、学校など、セキュリティ担当が少ない組織が狙われやすくなる。
  • 攻撃の数が増えることで、警察やセキュリティ会社も防御が追いつかなくなる可能性があります。

予測(今後どうなるか)

今後、次のような流れが予想されます。

  1. 日本語の詐欺メールがますます自然になる

    • 誤字だらけだったり、不自然な日本語だったりした詐欺メールが、
    • 「一見すると普通の会社メール」に近い品質になっていく可能性があります。
  2. 中小企業・個人を狙った攻撃がさらに増える

    • 大企業だけでなく、「テレワーク中の社員」「個人事業主」「自治体・病院」など、弱いところをピンポイントで狙う攻撃が増えるでしょう。
  3. 攻撃側も防御側もAIを使う“AI対AIの攻防”に

    • 攻撃者はKawaiiGPTのようなAIで攻撃を自動化し、
    • 防御側も、不審なメールや通信を見つけるためにAIを使う、
    • という**「AI対AI」の攻防が当たり前になっていくと考えられます。

対策(会社として・私たちとして)

会社としてできる対策

  1. メールの危険性を社員に“何度も”伝える

    • 「リンクをすぐにクリックしない」「添付ファイルを安易に開かない」
    • 「送信元のアドレスや文面に違和感がないか確認する」
    • こうした基本を、新人だけでなく全社員に毎年きちんと教育することが大切です。
  2. 二要素認証(2段階認証)の徹底

    • IDとパスワードだけでなく、スマホの認証アプリやSMSコードを使うようにして、
    • もしパスワードが盗まれても、すぐにはログインされないようにします。
  3. メール・Webフィルタリングの強化

    • AIを活用したセキュリティ製品を導入し、怪しいメールやリンクを自動でブロックする仕組みを整えます。
  4. バックアップと復旧手順の整備

    • ランサムウェア(データを人質に取る攻撃)に備えて、
    • 重要データのバックアップと、「攻撃を受けたらどう動くか」の手順書を用意することが重要です。

私たち一人ひとりができる対策

  1. 「おかしいな?」と思ったら一度止まる

    • 「至急!」「今すぐ対応してください」「アカウントが停止されます」など、
    • あわてさせる文章は、詐欺メールでよく使われるパターンです。
  2. パスワードを使い回さない・管理アプリを使う

    • 1つ漏れただけで、他のサービスまで乗っ取られないようにします。
  3. 二要素認証をできるだけオンにする

    • SNS、メール、ネットバンキングなど、重要なサービスでは必ず設定しましょう。
  4. 家族内で「怪しいメール・SMSを見せ合う」習慣を作る

    • 特に高齢の家族とは、「よく分からないメールやSMSは、一人で判断せず相談してから開く」というルールを決めると安心です。

影響(私たち・社会にどう影響するか)

KawaiiGPTのような攻撃用AIが広まると、次のような影響が考えられます。

  • だましメールの質が上がるため、「日本語が変だから怪しい」という判断が通用しにくくなります。
  • “ちょっとITに詳しいだけ”の悪意ある人でも、危険な攻撃に手を出しやすくなるため、攻撃の件数が増える可能性があります。
  • 企業や役所、病院がサイバー攻撃で止まると、日常生活や社会インフラにも影響が出ます。
    • 予約システムが止まる
    • 給与が振り込まれない
    • 通信販売やキャッシュレス決済が使えない など

結果として、「インターネットやキャッシュレスはなんとなく不安だ」という心理的なダメージも広がりかねません。

株価への影響

KawaiiGPTそのものは上場企業の製品ではないとみられるため、単体で直接「どこかの株価が急落する」という話ではありません

ただし、次のような形で間接的な影響は考えられます。

  • サイバー攻撃が増えると、攻撃を受けた企業の株価が一時的に下がるケースがあります。
  • 一方で、セキュリティ関連の企業(セキュリティソフト、監視サービスなど)は、
    • 需要が高まり、
    • 中長期的には投資家から注目されやすくなる傾向があります。

つまり、「攻撃用AIの登場」そのものより、実際にどの企業がどんな被害を受けたかが、株価には大きく影響します。

今後の見通し(回復までの時間)

今回の話は、「特定のサービスが止まった」という一時的なトラブルではなく、
**インターネット社会そのものに広がる“新しいリスク”**です。

  • そのため、「○か月で元に戻る」といった種類の話ではありません。
  • 現実的には、今後数年にわたって、攻撃用AIと防御用AIのいたちごっこが続くと考えられます。
  • 各国政府や国際機関も、AIの悪用を規制するルール作りを進めていますが、追いつくには時間がかかります。

言い換えると、

「完全に元に戻る」のではなく、
「攻撃用AIが存在する前提で、安全に付き合う社会」に変わっていく

――これが今後の現実的な見通しだと言えるでしょう。

同様の事例との比較

KawaiiGPTのような攻撃用AIは、実はこれが初めてではありません。

  • WormGPT 4
    • 有料の“犯罪向けAI”として報告されています。
    • ランサムウェアや不正スクリプトの作成を手伝う機能があるとされています。
  • FraudGPT など他の攻撃特化AI
    • クレジットカード情報の悪用や、SNSアカウント乗っ取りなど、
    • 特定の犯罪ジャンルに特化したAIも確認されています。

その中でKawaiiGPTが特に問題視されているのは、

  • 無料で使える
  • コミュニティが改良を続けている
  • “Kawaii”という名前で警戒心が下がりやすい

といった点です。
つまり、

「お金を払える一部の犯罪者」だけでなく、
広く多くの人が手を出しやすい危険なAI

だというところに、これまでとは違う深刻さがあります。

まとめ

最後に、ポイントを整理します。

  • KawaiiGPTとは?
    サイバー攻撃用に作られた、ガードレール(安全装置)のないAI。名前は「かわいい」が、中身はまったく可愛くない危険な存在。

  • 何が問題?
    専門知識が少ない人でも、詐欺メールやマルウェア作成をAIに手伝わせることで、攻撃のハードルが一気に下がる。

  • 今後どうなる?
    詐欺メールの質は上がり、攻撃の数も増える可能性が高い。防御側もAIを使い、AI同士の攻防が進む。

  • 私たちにできることは?
    ・怪しいメールやSMSはすぐに開かない
    ・パスワードの使い回しをやめる
    ・二要素認証を設定する
    ・家族や職場で「怪しいときは相談する」文化を作る

KawaiiGPTのような攻撃用AIは、これからも増えていくと考えられます。
だからこそ、「怖がるだけ」で終わらせず、

“便利なAI”と“危険なAI”の両方がある世界で、どう身を守るか

を、私たち一人ひとりが考えていくことが大切です。