防御用AIとは?
公開日:2025-11-15 更新日:2025-11-15
1. そもそも「防御用AI」ってなに?
最近「AIがサイバー攻撃をしてくる」「AIで守る」といったニュースを耳にすることが増えました。
**防御用AI(ぼうぎょようAI)**とは、かんたんに言うと
コンピューターやネットを守るために使うAI
のことです。
- 泥棒(どろぼう)を見はる防犯カメラの超高性能版
- 24時間休まず働く警備員ロボット
のようなイメージです。
人間の代わりに、
- 不審なメール
- おかしな通信
- 会社のシステムへの侵入の兆候(ちょうこう)
などを見つけて、「これ怪しいよ!」と知らせてくれるAIです。
2. 生成AIとの違い
最近よく聞く ChatGPT や 画像を作るAI は、まとめて 「生成AI」 と呼ばれます。
こちらは、
- 文章を「生成」する
- 画像や動画を「生成」する
といった 「何かを作り出す」AI です。
一方で、防御用AIは
- 攻撃のパターンを見分ける
- いつもと違う動きを見つける
- 必要なら自動で防御の手を打つ
といった、「守るために見張るAI」 です。
共通点と違いをざっくり整理すると
共通点
- どちらも「大量のデータ」を学習して賢くなる
- 間違えることもあるので、人間がチェックする必要がある
違い
- 生成AI:文章・画像などを作る
- 防御用AI:おかしな動きを見つけて、守る
最近は、防御用AIの中にも生成AIを組み込んだものが増えており、
「攻撃の説明を、わかりやすい日本語でレポートにまとめる」といったこともできるようになっています。
3. どんな防御用AIツールがあるの?
ここでは、世界でよく名前が出る代表的なツールを、ざっくり紹介します。
(細かい機能は会社ごとに違います)
3-1. Darktrace(ダークトレース)
- イギリス発の**「自己学習型AI」**で有名
- 会社のネットワークやクラウドのふだんの動きを覚えておき、
「いつもと違う動き」をしたパソコンやサーバーを見つけてくれる - ときには自動で通信を止めるなどの防御も行う
イメージとしては、
会社の「いつもの空気」を覚えている警備員が、
「今日はなにか様子がおかしいぞ」と気づいてくれる感じです。
3-2. Microsoft Security Copilot(マイクロソフト・セキュリティ・コパイロット)
- Windows や Microsoft 365 を作っているマイクロソフトのセキュリティ用AIアシスタント
- セキュリティ担当者が
- 「このアラートはどのくらい危険?」
- 「似た攻撃は他にもある?」
などと自然な言葉で質問すると、AIが調査を手伝ってくれる
- 攻撃の内容をレポート形式でまとめることもできる
人間のアナリスト(専門家)の右腕となる秘書AIのイメージです。
3-3. CrowdStrike Charlotte AI(クラウドストライク・シャーロットAI)
- サイバーセキュリティ専業の会社 CrowdStrike が提供する防御用AIアシスタント
- 会社のパソコンやサーバーに入った不審な動きの記録をもとに、
- 攻撃の流れを整理
- 必要な対策を提案
してくれる
- こちらも会話形式で聞きたいことを質問できる
「ハイレベルなサイバー捜査官AI」といった役割です。
3-4. Google Security Operations(旧 Chronicle)
- Google が提供する大量のログを解析するためのプラットフォーム
- 会社じゅうのパソコンやサーバー、クラウドのログ(行動記録)を集めて
AIで不審な動きや攻撃の兆候を探す - Google のAI技術(Geminiなど)を組み合わせて、
- 攻撃のパターンを分析
- 調査の手順を自動化
といったことも行える
「会社じゅうの防犯カメラ映像を、AIがまとめて見てくれるセンター」のような存在です。
4. 防御用AIには何ができるの?
ここでは、ニュースで出てきそうな機能を、生活に近い例で説明します。
4-1. 怪しいメールや通信をいち早く見つける
- 社員の誰かがニセの請求メールを開きそうになったとき
- 社内のパソコンから、海外の怪しいサーバーへ通信が始まったとき
防御用AIが「これはいつもと違うぞ?」と気づき、
- 管理者に**アラート(警告)**を出す
- 自動で通信を一時停止する
といった動きをします。
4-2. ランサムウェア(身代金要求ウイルス)からの防御
- 社内のファイルが急に暗号化され始めた
- 多くのファイルが一気に書き換えられている
といった「ランサムウェアっぽい動き」を見つけると、
- そのパソコンをネットワークから切り離す
- それ以上の被害が広がらないようにする
などの対応を、自動で行うものも出てきています。
4-3. 攻撃の全体像を、人間が理解しやすい形にまとめる
防御用AIの中には、生成AIの技術を使って
- 「攻撃がいつ・どこから始まり、どう広がったか」
- 「どのPCやサーバーが影響を受けたか」
- 「取るべき対策は何か」
といった内容を、**レポートや図解(ずかい)**にしてくれるものもあります。
これにより、
- セキュリティ専門家でなくても、経営陣や一般社員に説明しやすくなる
- 対応のスピードが上がる
といったメリットがあります。
5. 私たちの暮らしとの関わり
「防御用AIなんて、会社の話でしょ?」
と思うかもしれませんが、意外と生活に近いところでも使われています。
- ネット銀行やクレジットカード
- いつもと違う場所・金額での決済をAIが検知し、
一時的に止めてくれる
- いつもと違う場所・金額での決済をAIが検知し、
- スマホ決済やネットショッピング
- 不審なログインや支払いをAIがチェックしている
- クラウドサービス(写真やメールの保存など)
- 不審なアクセスを見つけるために、防御用AIが動いている
つまり、私たちが
- お金を預ける
- 個人情報を預ける
場面の多くで、すでに防御用AIが見えないところで働いていると言えます。
6. うまく使うためのポイントと課題
6-1. AIに「丸投げ」はできない
防御用AIは便利ですが、完ぺきではありません。
- 新しい攻撃を見逃してしまうこともある
- 逆に、安全な動きを「怪しい」と判断してしまうこともある
そのため、
- 最終判断は人間が行う
- 日ごろから社員への教育(怪しいメールを開かない等)が必要
といった、人の側の努力も欠かせません。
6-2. プライバシーや情報の取り扱い
防御用AIは、たくさんのログ(行動の記録)を集めて分析します。
その中には、社員や利用者の
- アクセスしたサイト
- 送受信したメールの情報
- アプリの利用状況
などが含まれることもあります。
そのため、
- 法律や社内ルールに従ってデータを扱う
- 監視しすぎて、社員のプライバシーを侵害しないようにする
といった ルール作りと説明責任 が重要になります。
7. これからの防御用AIはどう進化する?
今後の方向性としては、次のようなものが考えられています。
- より自動で動くAI(自律エージェント)
- 人間の指示なしに、状況を判断して対処までしてくれる
- 他社と連携した「チーム防御」
- 攻撃の情報をクラウド上で共有し、似た手口をすぐに防げるようにする
- 説明が上手なAI
- 「なぜその判断になったか」を、
非専門家にもわかりやすく説明できるようになる
- 「なぜその判断になったか」を、
一方で、
- AIそのものをだます攻撃
- 防御用AIの判断ミスをねらう攻撃
も増えていくと考えられており、
**「AI対AIの攻防(こうぼう)」**が激しくなっていくと見られています。
8. まとめ
- 防御用AIは、ネットやシステムを守るための「見張り役AI」
- 生成AIが「文章や画像を作るAI」だとすると、防御用AIは
「おかしな動きを見つけて、守るAI」 - Darktrace、Microsoft Security Copilot、CrowdStrike Charlotte AI、Google Security Operations など、
すでに多くの企業で導入が進んでいる - ネット銀行やスマホ決済など、私たちの身近なサービスも防御用AIに守られている
- ただし、AIに丸投げせず、
人間による確認・教育・ルール作りがこれからも大切
ニュースで「防御用AI」という言葉が出てきたら、
「あ、私たちのデータを見えないところで守ってくれている、
24時間体制の“デジタル警備員”なんだな」
とイメージしてもらえればOKです。