能動的サイバー防御(ACD)とは?
公開日:2025-12-16 更新日:2025-12-16
まず結論(30秒で)
**能動的サイバー防御(ACD)**は、サイバー攻撃を「起きてから消火する」だけでなく、
**怪しい兆しを早めに見つけて先回りし、攻撃に使われる仕組みを止める(無害化する)**考え方です。
国や重要インフラ(電気・水道・交通・金融など)を守るために、政府が体制やルールを整えています。
「ふつうの防御」と何が違うの?
たとえば家の防犯にたとえると…
- ふつうの防御(受け身):鍵を強くしておく。入られたら警察を呼ぶ。
- 能動的(先回り):
- 近所で不審者情報を共有する
- 侵入の“前兆”を監視カメラで早く見つける
- 侵入に使われている道具や拠点を止めて被害を防ぐ(※ルールと監視のもとで)
サイバーでも同じで、被害が出てからの対応だけでは間に合わないケースが増えています。
具体的には、何をするの?
ニュースで出てくるACDは、大きく分けて次のイメージです。
1) 「怪しい兆し」を見つける(早期検知)
攻撃は、いきなりドカンと来るよりも、
その前に「下見」「侵入口探し」「潜り込み」「準備」という段階があることがあります。
そこを早く見つけて、被害を防ぐ狙いです。
2) 官と民で情報を回す(官民連携)
国だけでは全体が見えず、企業だけでも守り切れません。
そこで、重要インフラの事業者などと情報共有し、対策を早く回す仕組みが議論・整備されています。
3) 攻撃に使われる機器を「止める」(アクセス・無害化)
攻撃に使われているサーバー等に対し、状況を確認した上で、
攻撃プログラムの停止・削除などで“攻撃に使えない状態”にすることが想定されています。
(※どこまで、いつ、どうやって行うかは法律・運用の要件に従います)
それって「やりすぎ」にならない?(心配ポイント)
ACDは効果が期待される一方で、次の心配もセットで語られます。
通信の秘密・プライバシーは大丈夫?
「攻撃の兆しを探す」ために通信データを扱うなら、
どこまで見てよいのか、勝手に広げないかが不安になります。政府が強すぎない?
先回りして止める権限は便利ですが、濫用が起きない仕組みが必要です。
そこで出てくる「第三者のチェック役」
このため、制度運用を監視・審査する独立した第三者機関として
**「サイバー通信情報監理委員会」のような仕組みが議論・整備されています。
要は、「やる側」だけで勝手にやらせないための“監視員”**です。
よくある質問(超短く)
Q1. 政府が私のLINEやメールを全部読むの?
そういう話ではありません。
ただし「通信情報をどう扱うか」は敏感な領域なので、
対象・手続・監督がどこまで厳格かがポイントになります。
Q2. 何のために必要なの?
電気・通信・金融・交通など、社会の土台が止まると生活に直撃するからです。
攻撃の規模が大きいほど「起きてから」では間に合いません。
Q3. 完璧に防げる?
万能ではありません。
だからこそ、ACDだけに頼らず、企業や個人の基本対策(更新、バックアップ、詐欺対策)が重要です。
生活者としての“現実的な受け止め方”
- ACDは「国家レベルの防犯体制」を強化する話。
- ただし、強い権限には必ず透明性と監視が必要。
- 私たちは「便利そう」だけでなく、歯止めが効く仕組みまでセットで見ていくのが大事です。
参考(一次情報中心)
- 内閣官房:サイバー安全保障に関する取組(能動的サイバー防御の検討など)
- 国会会議録(衆議院):サイバー通信情報監理委員会等に関する議論
- 防衛研究所(NIDS):能動的サイバー防御に関する解説・論点整理